11月と聞いてこれだ！！
と思いつく季節的行事がなく、
毎回どうやって過ごしていたっけかと考えるが、
結局クリスマスまでの準備期間という印象しかない為、
家に届いたケーキのチラシに目移りさせては、
その時が来るのを待つ。
大きなツリーはおけないがデスクを飾り付けるだけでもそれなりに楽しく過ごせる。
プレゼントは貰えないけど、
残り一年を無事に過ごせたらいいなとも思う。
今月は待ち望んでいたゲームの新作について書こうかとも思ったが、
書いていたものを読み返すと他の人の楽しみを奪う事になるかと思い、
着地のないぼんやりとした話題を書き連ねようと思う。
良いオチが浮かぶように未来の自分に託してみる。
最近行動範囲内に新しいパン屋が出来た、
小さな店構えではあるが、いつ来てもお客さんで賑わっている。
朝早くから営業していることを知って、
眠い目を擦って足を運んだ時には、
並んでいたご年配の方が
「食パンはいつ並びますか？」
と待ち遠しそうに店員さんと話していた光景は
一日の始まりからいい時間だなと自分の食べたいものを選んでいく。
さて、話は数日前に遡る。
たまたまつけたTVの特集でパン屋さんの作るクリームパンを見かけ、
その日からパン屋を見かけると
クリームパンは置いてないかと覗き込むようになった。
勿論コンビニで売っているクリームパンも遜色ないものではあるが、
どうしてもパン屋で作っているクリームパンが食べたいと思い、
行ったことない場所へ足を運ぶ。
先の話に出ていたパン屋も同じように買いに行こうとしたが、
クリームパンは並んでなかった。
(早くに行き過ぎたか)と思い違う種類を買って帰る。
そんな日が何日か続いた。
置いていることは宣伝のSNSから確認したから間違いはない、
時間をずらして来たある日、
来てみたらネームプレートだけあった
(もしかして今から来るのか)と確認したら
売り切れだと言われてしまいまた別のパンを買って帰る。
こうなってくると益々どんな味が気になって仕方ない。
あと何日行ったら巡り合うのか、
特に気にもしなかったチョココロネが意外に美味しくて
もうこれで良いのでは？と思い始めた翌々日。
用事で出掛けた帰り道にチラッと店から覗くと
2列に積まれたクリームパンの姿が
「「「あったー！！！」」」
と叫びそうになりながら
身体は条件反射で店に駆け込んでレジを通した。
心底嬉しくなって、
なんでも出来そうな無敵になった気がして足取りが軽く感じる。
家に着いて諸々の事を済ませて、
ついにクリームパンを食べる。
卵よりほんの少しミルクが強いカスタードクリームに
絵に描いたような焼き色は想像通りの
ふわふわなパン生地と合ってクリームがそこまで重く感じない、
真ん中に添えられたローストされたアーモンドの
ちょっとした香りがまた違った味を引き出してとても美味しい。
気がつけばあっという間に食べ終わっていた、
もっと味わうべきだったかと片付けながら、
食べたくなったらまた買えば良いかと楽観的に考える。
だって今の自分は食べたかったクリームパンを食べられたから無敵なのだ。
そんな気分のまま予定にはなかった掃除をしようと取り掛かる。
改めて読み返すと、
ここまでクリームパンを買って食べることを
大袈裟にした文章は後にも先にも書くことはないだろう。
でもあのときの感動は確かなもので、
ぼんやりとしたオチだとしても、
この嬉しさを誰かと共有したかったかもしれない。
なんでもない幸福を話す場がある事に感謝して。
(2022/11/22)
